2009年08月18日

死んでいくのに、なぜ手術をするのかC

そもそも、助からない患者に手術をしようとするのは矛盾している。残り少ない人生の中で、どうしてもやらなければならないことがあり、そのためにもう少しの時間が欲しいというのなら手術を受ける気にもなるだろう。だが私は、そんな『ほんのわずかな生』が欲しいのではない。妻を未亡人にしたくなかったし、何よりも子どもの将来を見届けるだけの時間が欲しかった。そのためにも、先に死ぬわけにはいかなかった。
私は多くのガン患者を見てきた。五週間もコバルト治療を受け、ガン細胞を徹底的に叩く。その結果はどうだろう。死にたくなるほどの吐き気に苦しむだけで、一時的にガン細胞は小さくなるが末期ガンの患者にとってそれは気休めにしかすぎない。いずれガン細胞はほかの臓器にも転移して、ますます苦しみを増やしていく。
そもそも現代医療は、体の異常のある部位はすぐにでも切り取ってしまえという考えから成り立っているのではないかと思う。たとえ手術をしないまでも大量の薬を飲ませる。その薬は悪化した臓器には効果があったとしても、ほかの臓器に副作用を及ぼす。すると今度は、その臓器の専門家が悪くなった臓器に効く薬を処方してくれる。
つまり、対処療法である。日ごろから健康で自分が病気にかかることなど想像もしなかった私にだって、そんなことくらいは分かる。もちろん、対処療法で治る病気はそれでいいだろう。私は現代医療をすべて否定するものではない。だが、私たちの身体には潜在的な治癒力というものがあり、私が現代医療に不信感を抱いたのも、この潜在的な治癒力を目覚めさせてくれるものが何かということに気づいたからだ。
その何かが、私のガンを殺してくれた。
タグ:がん治療

2009年08月14日

死んでいくのに、なぜ手術をするのかB

私はその医者に尋ねた。
『じゃあ、その手術を受けたとして、少しは長生きできるんですか?』
すると彼は、実に簡単にこう答えてくれた。
『たぶんダメでしょうね』
『それじゃ、私の答えは『お断り』です』
『『お断り』とはどういう意味ですか?』
医者はまるで私を異性人を見るかのような目で見た。
『つまり、手術は受けないってことです。どうせ死んでいくのに、どうして私がそんな手術を受けなければいけないんですか』
私の言葉に黙って首を振りながら去っていく医者を見ながら、私は口笛でも吹いてやりたい気分だった。手術をしなければ痛い思いもせずにすむし、首の筋肉を切除された惨めな姿を妻や家族、友人たちに見られずにすむ。
医者は妻に電話をして、あなたの夫は手術をする必要があるから夫を説得するべきだと言ったらしい。もはや私より医者を信じている妻は、なんとか手術を受けてほしいと言う。しかし、私は聞かなかった。
タグ:手術